フリーランスや個人事業主、小規模企業の経営者がサラリーマンと大きく異なるのが、「退職金がないこと」です。
ですので、フリーランスや個人事業主、小規模企業の経営者は自分で老後の資金を貯めていかないといけません。
しかし、いざ貯めようと思ってもなかなか貯まらないのがお金です。
そんな時に有効なのが小規模企業共済。
小規模企業共済に加入すべきか、また、本当に得なのかまとめました。
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小規模企業共済とは?
老後の保障のための制度と言えば、国民年金制度があります。
しかし、私のような30代の人間がもらえるようになるのは30年以上先のことですし、本当に将来もらえるかどうかはわかりません。
また、もらえたとしても、きっと年金だけで生活することは出来ないでしょう。
年をとってもいつまででも働くことができればよいのですが、健康面なども含めてどうなるかわかりません。
ですので、今のうちからある程度の老後資金を貯めておく必要があります。
サラリーマンであれば退職金制度がありますが、フリーランスや個人事業主、小規模企業の経営者の場合は退職金を自分で貯めなくてはなりません。
そんなときに良く使われるのが小規模企業共済です。
小規模企業共済とは、小規模企業の経営者や役員、個人事業主の方が、廃業や退職時の生活資金などのために毎月一定額を積み立てるという退職金制度です。
掛金は全額を所得控除(所得税を計算するうえでの経費のようなもの)ができますので、高い節税効果があります。
また、そのほかにも様々なメリットがあります。
小規模企業共済は、国の機関である中小機構が運営していますので、運営会社が倒産するという心配はありません。
小規模企業共済のメリット
小規模企業共済は、次のメリットがあります。
- 掛金が全額所得控除となる
- 共済金は一定の運用益が加算される
- 死亡したときの家族への保障にもなる
- 受け取り方法を選べる
- 低金利の貸付制度を利用できる
掛金が全額所得控除となる
小規模企業共済に加入する最大のメリットと言えます。
確定申告の際に、掛金の全額を所得控除できるため、高い節税効果があります。
また、月々の掛金は1,000円~70,000円まで500円単位で自由に設定が可能で、加入後も増額・減額できます。
共済金は一定の運用益が加算される
小規模企業共済で受け取ることができる共済金は、加入区分(個人事業か法人か)や請求事由(廃業なのか解約なのかなど)により4つの種類があります。
具体的には、共済金A、共済金B、準共済金、解約手当金です。
もらえる金額は共済金Aが一番多く、解約手当金が一番少なくなります。
共済金は一定の年数以上加入していれば、掛金より多い金額がもらえます。
銀行に預けてもほとんど利息がつかない時代ですから、資産運用方法としても魅力的です。
ちなみに、請求事由として1番多いのが老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を払い込んだ方)です。
老齢給付の場合は、共済金Bとなります。
引用:中小機構
死亡したときの家族への保障にもなる
小規模企業共済の主な加入目的は、「老後の資金を貯めること」ですが、万が一加入者が死亡した場合は、死亡退職金となり、家族への共済金Aが支給されることとなります。
ですので、自分が死亡した場合の家族への保障にもなります。
死亡退職金は相続税の対象となりますが、相続税の計算をするときも優遇されています。
受け取り時に税金が優遇される
小規模企業共済を受け取るときは所得税が課税されますが、受け取り方法により所得税の課税方法が異なります。
廃業したときや役員を退任したとき、老齢給付を受けるときは、退職所得扱いとなります。
また、一定の場合は分割で受け取ることも可能となり、その場合は公的年金等の雑所得扱いとなります。
いずれも所得税の計算をするときに優遇されています。
低金利の貸付制度を利用できる
小規模企業共済の加入者は、掛金の範囲内で事業資金の貸付制度を利用することができます。
貸付制度は、資金の用途や借入金額などにより、返済期間や利率が異なりますが、現在の利率は0.9%と低利率となっています。
また、銀行で借りる場合は申し込みから審査まで一定の日数がかかりますが、小規模企業共済の貸付制度は即日貸付も可能です。
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小規模企業共済のデメリット
小規模企業共済のはメリットだけでなく、次のデメリットもありますので、加入するのであれば十分に検討することが必要です。
- お金が出て行く
- 一定期間以上加入しないと共済金がもらえない
- 一定期間以内に解約すると元本を下回る
- 任意解約の場合は税金が高い
お金が出て行く
当然ながら、毎月一定額の掛金の支出が増えることとなります。
預金とは違い、すぐに引き出すことができるものではありませんので、掛金は余裕資金の範囲内とする必要があります。
一定期間以上加入しないと共済金がもらえない
共済金をもらうには、最低限の加入日数があります。
共済金A・共済金Bは最低6ヶ月以上、準共済金・解約手当金は最低12ヶ月以上掛金を納付しないと受け取ることができません。
一定期間以内に解約すると掛金を下回る
途中で解約する場合(解約手当金)は、240ヶ月以上掛金を納付しないと、もらえる金額が掛金を下回ります。
また、途中で掛金を変更している場合は、240ヶ月以上掛金を納付していたとしても、もらえる金額が掛金を下回ることがあります。
任意解約の場合は税金が高い
65歳未満の方が任意解約をする場合や、掛金を12か月以上未払いによる解約した場合(機構解約)で解約手当金を受け取るときは、所得税は一時所得扱いとなります。
一時所得の場合は、
「(総収入金額ー収入を得るために支出した金額ー50万円)×1/2」
に対して所得税がかけられることとなります。
これを小規模企業共済に当てはめると、
「(解約手当金ー0円ー50万円)×1/2」
となります。
掛金はすでに支払ったときに所得控除として所得税の計算上引いているため、もらう時の「収入を得るために支出した金額」とすることができません。
ですので、解約手当金が多額の場合は税金が多くかかることがあります。
小規模企業共済は本当に得なのか?
小規模企業共済は、メリット・デメリットがあるということをご説明しましたが、1番気になるのが結局得なのか?ということです。
加入から共済金をもらうまでのシミュレーションをしてみます。
前提条件
- 2019年8月から30年間加入
- 共済金は共済金B(老齢給付)を一括でもらう
- 掛金は月額5万円(年額60万円)
- 課税所得金額は毎年500万円とする。
中小機構のHPに加入シミュレーションがありますので、こちらに必要事項を入力すれば、節税金額や将来もらえる金額を計算することができます。
計算すると、以下のようになりました。
掛金合計は、60万円×30年=18,000,000円ですが、共済金Bで受け取ると21,059,000円となります。
しかし、ここで注意したいのが、共済金の金額は税金が考慮されていません。
実際は上記の金額から、退職所得として所得税と住民税がかかります。
税金を考慮すると手取額は次の通りとなります。
- 退職所得:(21,059,000円ー※15,000,000円)×1/2=3,029,000円(千円未満切捨て)
※退職所得控除 8,000,000円+700,000円×10年=15,000,000円 - 所得税等:(3,029,000円×10%ー97,500円)×102.1%=209,713円(円未満切捨て)
- 住民税:3,029,000×6%(百円未満切捨て)+3,029,000円×4%(百円未満切捨て)=302,800円
- 手取額:21,059,000円ー209,713円ー302,800円=20,546,487円
税金を考慮した場合の手取額は、20,546,487円となりました。
30年間で、2,546,487円増えた計算です。
また、年間節税額が182,500円ですので、30年で5,475,000円税金が減ることとなります。
これらを合計すると30年間で8,021,487円得したこととなります。
よって、税金を考慮して実質返戻率を計算すると
「20,546,487円÷(18,000,000円ー5,475,000円)=164%となります。
今回は所得が500万円として計算しましたが、もっと所得が高い方はさらに節税効果がありますし、掛金を最高額の年間84万円とすれば、節税額も共済金も増えますので、高所得者ほどやっておいて損はないでしょう。
□編集後記□
明日はいよいよ税理士試験です。
明日試験を受けられる方は、今日は無理をせずに早めに寝るようにしましょう。
また、ぜひ、試験の30分くらい前に目を閉じて1年間を振り返ってみてください。
ツラかった思い出が多いかもしれませんが、きっといろいろな方に支えられた1年だったと思います。
その方たちと、そして、無事に試験を受けられることに感謝してください。
そうすれば、試験中も不思議と緊張しないものです。
皆さんの幸運を祈っています。
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